荷物

船を待つ男
 
シナリオ Chapter 2(ステージ8「船を待つ男」)
1、波止場。港の倉庫の前。海猫の鳴き声。
2、今日もMr.ロングホーンと愛犬が座っている。
3、ラビが近付き、声をかける。
 
ラ ビ「こんにちは」
ロング「やあ」
ラ ビ「またいろんな話を聞かせてください・・・えーっと」
ロング「ハリー・ロングホーンjr 、こいつはズー」
ラ ビ「ぼくはラビっていいます」
ロング「君は、あの倉庫でアルバイトしているのか」
ラ ビ「ええ、そうです」
ロング「あの倉庫は昔、酒場だった。もうずいぶん前のことだが・・・」
ラ ビ「思い出があるんですか?」
ロング「ちょっとした・・・な」
ラ ビ「遠い国ってどんな所なんだろう」
ロング「船が陸(おか)に近づくと潮の香りと波の音が強くなってくるんでもうすぐ
    だってわかるんだ。やがて海猫の声が聞こえてくる頃には町も見えてくる。
    それが初めての国だと、その時が一番わくわくするんだ。そのあたりの距離
    から見ると、子供の頃見た本の挿し絵そっくりに見えてしまうんだ。
    やった、とうとう見つけたぞって・・・でも、それは決して見つかるはずの
    ない船乗りのネバーランドでな・・・」
ラ ビ「ネバーランド?」
ロング「子供にしか見えない想像の場所だよ。大人になるといつの間にか忘れてしま
    う子供の空想なんだが、ほんとうは心の奥に残っていて影響を与え続けてい
    るんだ。大人になって本人は意識してなくってもネバーランドの方で忘れち
    ゃあくれないんだ」
ラ ビ「じゃあ、子供の時にたくさん想像して、夢見た子供は大人になっても楽しい
    んだね」
ロング「ああ、玉手箱みたいなもんだ。子供のうちにその中へ夢をたくさん仕舞い込
    んできた大人は、いつまでもわくわくする人生がおくれるんだ」
ラ ビ「ロングさんは、たくさん持ってる?」
ロング「いや、それほど多くはなかった。でもわしには何が入っているか自分でよく
    知っていたんで大人になって困ることはなかった。それが、ずーっと憧れ続
    けた挿し絵の異国だった」
ラ ビ「ぼくは人形なんです。ぼくを作ってくれたおじいさんがぼくにアルバイトを
    勧めてくれました。多くの人と話して色々な人生を見てくるようにって」
ロング「わしには君の若さと希望がうらやましいよ」
ラ ビ「だから、ぼくはその通りに多くの人と出会いました。ロングさんとも出合い
    ました。それは、ぼくがちゃんとした人間の大人になった時、わくわくさせ
    てくれるように夢をたくさん仕舞い込みなさいってことなんですね」
ロング「わしは、その玉手箱も希望も一度に失ってしまった。先輩の忠告を聞かなか
    ったばかりに希望を絶望に変えてしまった」
ラ ビ「ロングさんはいつもここで何をしているんですか?」
ロング「ここでかね。君は素直だな。そう・・・なんと答えたらいいか。何年もはっ
    きり聞かれた事がなかったんで答えを用意していないが・・・・ただ座って
    るのでもないし、やはり待っていると言ったほうが正しいのかもしれん」
ラ ビ「何を待ってるんですか?」
ロング「それは・・・来るはずのないもの」
ラ ビ「来ないことが分かっていて、どうして待っているのですか?」
ロング「待つということは、期待していると苦痛だが、絶望している者には安らぎを
    与えてくれる。わしは人生に翻弄され過ぎた。わしが背負える以上のな・・」
ラ ビ「いつまでここで待つのですか?」
ロング「おまえは素直でいい子だ。わしがここに来るようになってもう何十年にもな
    るが、誰も何も聞かんかった。ちょっと頭のおかしい、じじいがいる位にし
    か思っておらんのは分かっておる。ここ数年は誰も話しかけてもこなかった。
    これだけ話したことはいままで無かったし、自分から話したいと思ったこと
    もなかった」
ラ ビ「また来ていいですか?」
ロング「ああ、もちろんだとも。わたしからもお願いしたいくらいだ。おまえのおか
    げで何かが変わりそうな気もする。じゃあ」
ラ ビ「おやすみなさい」
ロング「ああ、おやすみ」 
ラビ
4、いつものようにMr.ロングホーンはよっこらしょと腰を上げる。愛犬ズーも彼に合わ
  せるように立ち上がり歩き出す。
5、後ろ姿が闇に溶けて行く。
6、画面がフェードアウトして、Chapter 2の終了シークエンスが表示される。

 Chapter 3へつづく。12/29日発表決定。乞うご期待。

お知らせ。
「究極の倉庫番」未発表シナリオ〜船を待つ男〜は、Chapter 4までありますが、すべて
公開の後、ひっとしたら豪華声優陣による音声データも発表できるかも知れません。
まだ未定ですので、期待せずに待っていてください。